坂本誠のフィジカルトレーニング

Mako’s Physical Training. “Perfecting the basics is the fastest.” "Love Barbell-based training and Slow Jogging"

スロージョギングのフォアフット着地は初心者にも勧めるべきか?

フォアフットというのを聞いたことがありますか?フォアとは「前部の」という意味です。フォアフット着地とは「足の前の部分で着地する」という意味で、具体的には足の5本の指の付け根あたりのことになります。最近、マラソンの大迫選手が日本新記録を樹立し、その走り方の特徴としてフォアフットが脚光を浴びています。「だからみんなフォアフットにするべきか?」今回はこれついて書こうと思います。

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(1)ヒール着地とフォアフット着地

ヒール着地はかかとから着地する走法です。一般的によく聞くのはこちらで、長距離にはこれが向くとよく聞いたものです。理由は重心移動がかかとの方が滑らかに移動するそうで、フォアフットだとブレーキが掛かるということです。アキレス腱炎の原因にもなると書かれていました。しかし、近年Liebermanらの研究(2010年)では、かかと着地よりもフォアフットの方が膝への衝撃が少ないことを明らかにし話題になりました。

私自身の経験でいうと、以前ベタ足が良いと聞いてヒール着地をしていました。私は元々半月板を痛めており、走るといつも右膝が痛くなり困っていました。ところがフォアフットに変えて膝が痛むことが少なくなりました。フォアフットが治療効果があるわけではなりません。そもそも私は高校時代に陸上競技でやり投げをやっており、短距離走の練習でフォアフットを自然とマスターできていました。だから、フォアフット自体が楽にできたのかもしれません。それにしてもこんなに違うのかと驚いたものです。

 

(2)長時間のフォアフットは可能なのか?

こう聞くとフォアフットが最も良い着地だと考えがちですが、そうとも言い切れません。私が趣味で走っていた距離は5〜7kmほどで、しかもスロージョギングです。以前ハーフマラソン(総社吉備路マラソン)に出たことがありますが、フォアフットで走れたのは前半だけで、後半からはヒール着地を余儀なくされました。脹脛が疲れてきて持ちこたえられなかったのが理由です。タイムは1時間57分で時速10km以上だったため、私にとってはかなりのオーバーペースでした。普段体験している以上の過負荷が掛かったため、筋肉も腱も耐えられなかったのでしょう。最近のKulmaraらの研究(2013年)では、フォアフットのランナーはヒール着地のランナーよりもアキレス腱張力が強いことを報告しています。フォアフットは膝への衝撃が少ない分、アキレス腱や腓腹筋などへの負荷が強くなるため、ベースとして筋力を高めるかプライオメトリックスのようなトレーニングで筋腱を強くしておくことが、フォアフットで長距離に挑む場合に必要なのかもしれません。

 

(3)体力が低い方たちが健康づくりにフォアフットで走る意味があるのか?

では、このようなフォアフット着地を体力が低い方たちに指導するのは大丈夫なのか、という考えが出てくると思います。フォアフットはアキレス腱に負荷がかかり痛めやすくなるのではないかという考えです。私はフォアフットで実施することが膝にかかる衝撃を和らげるメリットがアキレス腱にかかる負担を上回ると思います。競技者の場合は負荷が高く、同時に長い時間練習することがありますが、初心者の場合10〜20分程度で、しかもスロージョギングです。私の経験上やり過ぎない限りフォアフットは高齢者でも問題ないと思います。ただ、万人に適用できるかというとそれは違うと思います。それは指導者やトレーナーが確認するべきことだと思います。

 

(4)フォアフットを一般ランナー導入するトレーニングのプログレッション(漸進)が必要

私たちトレーナーは一つの動作を習得する時、エラー動作が起こる場合にはその動作を習得しやすいように複雑な動作の中から難しい動きだけをピックアップしてそこだけ分習練習することがあります。例えば、スクワットでどうしても骨盤の前傾ができず、円背になってしまう場合にはバランスボールの上に座って骨盤の前傾と後傾を強調する動き(ペルビックチルト)をする場合があります。その骨盤周辺の筋肉が滑らかに動くように意識を入力していきます。感覚が養われるため、スクワットでも骨盤の前傾が意識でき、スクワットの動作が習得できます。このように簡単から複雑へ進めていく過程をプログレッションと言います。

また一般市民ランナーがマラソンにフォアフットを導入する場合には、ふくらはぎ周辺の筋力を鍛えるトレーニングを実施しても良いでしょう。筋力トレーニングは筋肉だけでなく、関節、腱、靭帯を強くする効果もあります。またランニング効率を向上さえる効果もあります。その場合も筋力トレーニング、プライオメトリックスのように順を追ってプログレッションすることが重要になるでしょう。

 

(5)脚の形態上の問題

私が思うフォアフットの問題としてオーバープロネーション(X脚傾向)のといった脚の形態的な問題も考えるべきだと思います。X脚が強い上にフォアフットを行うとよりプロネーションが強めに出るのではないかと思います。足首や股関節の向きなどによりフォアフットを選択するべきか考える必要はあると思います(参考 https://www.sportsauthority.jp/ec/display/freepage/?id=staff-plan_running_02)。